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最高裁判所第二小法廷 昭和51年(オ)576号 判決 1976年10月08日

主文

本件上告及び附帯上告を棄却する。

上告費用は上告人らの、附帯上告費用は附帯上告人らの各負担とする。

理由

上告代理人伊藤典男、同村井優文の上告理由第一点について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同第二点について

民法三八八条により抵当権設定者がいわゆる法定地上権を設定したものとみなされるためには、抵当権設定当時に土地とその地上建物が同一の所有者に属することを要し、これらが別個の所有者に属するときには法定地上権を設定したものとみなすことはできないのであつて、この理は両所有者の間に親子・夫婦の関係があるときでも同様であると解するのが相当である。けだし、同法条の定める法定地上権の制度は、建物の存続には敷地の利用権を必要とするが、抵当権設定当時に土地とその地上建物が同一の所有者に属する場合には、土地の利用権を設定することが法律上不可能であるので、競売の結果土地と建物の所有者を異にするに至つたときに建物所有者のため地上権が設定されたものとみなすことにより建物の存続をはかろうとするものであるところ、土地と建物が別個の所有者に属する場合には、たとえその間に親子・夫婦の関係があつても、土地の利用権を設定することが可能なのであるから、その間の土地利用に関する法律関係に従つて競売後の土地所有者と建物所有者との間の法律関係も決せられるべきものであつて、このような場合にまで地上権を設定したものとみなすべきではないからである。

これを本件の場合についてみるに、抵当権設定当時に本件土地及びその地上にある本件各建物が同一の所有者に属したことは原審の認定しないところであり、上告人の主張によつても、親子・夫婦に各別に帰属していたにすぎないのであるから、本件土地について民法三八八条により地上権を設定したものとみなす余地はない。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

附帯上告代理人林千衛の附帯上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗本一夫 裁判官 岡原昌男 裁判官 吉田 豊 裁判官 本林 譲)

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